ダビデの星

東 小枝子

学生の頃 兄二人の軍服姿を
美しいと思った
そして、学業半ばに召され
お国のためにと出征(いでゆ)く兄達を
誇らしく見送った

めぐり めぐって
戦いは日本の空まで迫り
庭の花々の中に大きな
爆弾の穴をあけた
街は焼かれ、人々は死んだ

南方で戦死という報せの
一枚の紙を抱きしめて
母は幾夜も泣いた
父は一言も云わず
正座して じっと庭の
桜の古木を見ている
桜の花びらが音もなく
はらはらと散っていた


月日は飛び去り
私はアメリカに住み
男二人 女二人の 子の親になった
子らと共に平和で幸せな
月日は矢のように過ぎ去る

希望に満ち 学生を育てることに
喜びをもっていた二男、
ダビデを一夜で失った

朝食に姿を見せない子が
静かな寝顔で 呼べど応えず
サヨナラも云わず天国に旅立つとは

愛し子よ
年老いた父母を残し
若き そなたが先立つとは
なんと なんと 悲しいことか
そなたの 朗らかな声は
もう聞こえないのか
母は そなたの姿を求め
ダビデよ ダビデよと呼びつつ
泪の谷を行く

空を仰げば 空に
山に目を向ければ 山に
そなたの笑顔が母を呼ぶ

はぐくみ 育て
胸に抱きしめて 育てた
愛し子を 失うことは
こんなにも深く
果てしなく悲しく
母の胸を 裂き刻む
母の生きている限り
どうして忘れることがあろうか
ダビデよ
今夜も 母は星のきらめく
大空を仰いで
“I will see you again” と云った、
そなたの言葉を繰り返しつつ
唯々 再臨の日、、、再び会う日を
待ちわびている
愛し子を失った母の心を
誰が知ることが出来るか


思い起こすに
あの第二次大戦のさなか
学業中途で 立ち上がり
御国のためと
真白のマフラーをなびかせて
飛び立った少年達よ
特攻隊とは
そなた達に贈られた名前
翠の翼を連ねて
飛び立って行った紅顔の少年達よ
南の空は 今日も晴れているのに
何故 一機も帰っては来ないのか
私は今、あなた達の母を想う
戦争によって 愛し子を失う
幾万の母達の泪を、、、悲しみを、、、叫びを、、、
私は今 心に受ける
我が愛し子を失う
母の心の痛さを、、、

日がめぐり 月がめぐって 現在
時代は又も音を立てて
私に迫ってくる
静かな音で
激しい音で
そして、悲しい音で
刻々と迫って来る
イラクから サマーワから
サウジアラビヤから
そして 悲しむ母の胸から

どんなことがあっても
戦争で少年達を その母の手から
奪うことは 避けねばならない

愛しい我が子に先立たれ
深い悲しみを知った今、
母たちの嘆きを 増してはならない
戦争で 世界の少年達を
失うのは嫌だ

我が血を分かち 注いだ我が子の
成長に希みをかけ 生きる母に
悲しみを与えてはならないと
私は涙の中に祈っている

愛するDavid
ダビデの星は
一番 輝いている星です
母は 今夜も泪を拭いて
“David, see you again!!”


(ご次男Davidさんは今年3月に天に召されました)