不完全な者を用いる主

竹下 弘美

イースター直前に起きた次の事件は主の哀れみと奇跡をまざまざと見せられた事件であった。まだ、ご存知ない方のために事件のあらましを綴る。

3月12日金曜日、朝9時。ジョージア州アトランタで強姦罪で起訴されていたブライアン・ニコラス(33歳)は法廷で警備の者から銃を奪い、裁判長、そのほか二人を射殺。車を盗み逃走。さらにトラックの持ち主を射殺し、そのトラックに乗り移って逃走し続けた。

13日土曜日の朝2時、タバコを買いにコンビニに出かけた26歳のアシュレイ・スミスは自宅前でニコラスに銃をつきつけられた。自分のアパートに連れ戻され、ガムテープや電話線で縛られた。ニコラスは彼女に彼の言うとおりにすれば危害は加えないと言った。彼女は怯えながらも、自分には5歳の娘がいること、夫は4年前に事件に巻き込まれて刺殺されたこと、もし、自分が殺されたら、娘は孤児になってしまうと訴えた。

そして、彼女自身、夫を失ってから荒れた生活をし、軽犯罪で何回か捕まったため、娘の養育権が奪われ、土曜日の朝10時にその娘に会いに行く約束があるので、それをかなえさせてほしいと嘆願した。はじめ、ノーと言い続けていたニコラスは少しずつ、彼女の話に耳を傾けていった。

彼の心が落ち着いてくるのを見た彼女は本を読んでもよいかと彼に訊き、リック・ウォレンの著書、“The Purpose Driven Life”から、「あなたの生きる目的は?どんなタレントがあなたには与えられているか」の部分を読んできかせた。私たちは神様にたえず、どうすればよいかを問いながら生きていくべきだという強烈なメッセージだった。

しばらく彼女の話に耳を傾けていたニコラスは、彼女のことを、神様から離れてしまった彼のところに遣わされた天使だと言いだした。二人でTVを見ると、そこには彼を追っている警察の動向が報じられていた。スミスは彼に朝食のパンケーキを作ってご馳走した。「本当のバターだ」と彼は喜んで食べた。

彼は彼女に自分はどうしたらよいのだろうと問うた。彼女は自首を勧め、牢獄で神様のことを述べ伝えるのが、彼のこれからの使命だと語った。彼は銃をベツドの下に置いた。朝9時半、彼女は娘に会いに部屋を出、警察に通報。彼は白いシャツを振りながら、アパートの外に出、降服、逮捕された。

この件でグッドフライデーの前日の3月24日に表彰されたスミスは「まず、救い主、イエスさまに感謝です。私の生き様を神様が使ってくださったのです。神様は人生の悲惨なときにも奇跡をおこしてくださるお方です」と語った。二人とも、昔教会に通っていたことがあり、神様から離れていた放蕩息子だったという共通点があった。彼女も主によって起きあがろうとする途上にあったのだ。

かつてイエス様の弟子達がそうであったように神様は不完全な者をお使いになる。そばで夫が、「それじゃ俺はだめだな」とつぶやいた。

(サン・ロレンゾ教会の竹下弘美さんはフリーランス・ライターで、今年度の白百合会の集会でお話しして頂くことを予定しています。お楽しみに。)